谷崎潤一郎『刺青・秘密』

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新潮文庫版。加山又造によるこの絢爛な装丁がしっくりきます。

昔読んだ小説を、朗読で二三回聴き直しました。朗読で聴いてみると、『刺青』における女の台詞が非常に艶やかなのが分かりました。

ようやく巡り会った、素晴らしい皮膚の持ち主である、美少女の背中に、勝手に女郎蜘蛛を彫り込む清吉。彼女の背中に女郎蜘蛛が禍々しく蟠った途端、美女はその心持ちを変え、ありとあらゆる男を肥やしにしてしまう、剣のような瞳を輝かす女へと変貌する。

『秘密』は、むしろこの小説が終わった後の主人公がどこへ向かったのか、それが気になるような話。倒錯的な遊戯でないと快楽を得られなくなった主人公が、ある日偶然、過去に一瞬人生が交錯した美しい女性と再会し、再び風変わりな逢い引きをするようなるが…

そのラストはとてもとても男性本位な筋道で、何様なんだろうかとか、どれほどの美男なんだろうかと思ってしまう。現実世界を生きるわたしからしてみれば、どれだけ暇人なのかとも感じてしまう。が、日本橋や人形町界隈の路地を彷徨う描写は、それこそ読者をもオブスキュアな街へ誘う不思議な効果をあげている。

切れ味の鋭い匕首のような文体を、小説毎に使い分けているのがよく分かった。就中『秘密』にいたっては、「オブスキュア」とかカタカナがうまく使用されている。有名なのは次の台詞。

「Arrested at last…」

この幻想などない東京に、垣間見させてくれる奇妙な世界。気がついたらのめり込んで読んでいる、聴いている。おそらく多くの谷崎愛好家と同じく、春琴が一番好きでしたが、他の作品も読み直そうかと思いました。

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