”The Cove”、あるいは太地、イルカ、クジラ

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この映画、何気なしに手に取りました。その時の感情は「あー確かこのドキュメンタリー、イルカ漁の話だったっけ?アカデミーでも確か賞を取ってたよな」くらいでした。

2009年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞作。見てみてびっくり。先だって訪れた和歌山県は太地町にスポットを当てられた作品でした。知りませんでした。確かに、彼の地には世界でも有数の「くじらの博物館」があります。そこのイルカの可愛さ、人なつっこさに感動したばかりでした。そんな中、この映画を見てしまいました。

この映画は、様々な議論を胎んでいるだけでなく、上映に際し非常に問題になった作品です。それもそのはず。ラストのシークエンスはあまりに衝撃的で、なんだこれは、の一言です。血の海とはまさにこのこと。イルカ漁の凄まじさはトラウマになります。

しかしながら、この映画の位置づけはなかなか難しい。わたしが感じたことを以下にとりとめもなく記しますと、まず太地町の漁師さんたちが怖すぎる。まるでヤクザみたいで、野蛮すぎるということ。こういう描かれ方だし、相手が紳士的でないがための反応かもしれませんが、とても下品で野蛮に見えたのが非常に残念でした。

次に、イルカという生き物自体が持っている価値の問題があると考えます。イルカは人間に近い生き物というのは周知の事実。そのイルカが、別名イルカのアウシュヴィッツでどういう目にあっているか。当然のことですが、我々は日々、命を喰らっています。野菜にせよ、肉にせよ、魚にせよ。この手のドキュメンタリーは『いのちの食べかた』やドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマン監督の『肉』、あるいは『世界残酷物語』のフォワグラのくだり、等でも屠殺シーンが描かれています。わたしたちは生きるために、日々何かを殺し、そのおかげで生きている。それは明確な事実ですが見ていないだけです。だとすると、牛豚鳥の屠殺はよくて、生きたまま捌かれる魚もよくて、イルカはだめなのか?鳥なんてインフルエンザにかかれば、かたっぱしから殺処分されます。よって、「イルカ」というこの括弧付きの生物が持つイメージこそが、非常に重要な意味を持っているということに気がつきます。

また、この映画の主幹的役割をなすリック・オバリーという人物が、なぜ日本のイルカを救おうという運動に打って出たのか、その経緯についても考えさせられるものがあります。彼は、元イルカの調教師であり、むしろはじめはイルカを飼う側、虐げる側であったということ。ところが、その際に、様々な経験を経、イルカをつかまえることに反対する立場に至った、この彼の現在地の経緯が非常に説得的であるために、映画が正当化されているような雰囲気が醸成されています。

イルカ漁における、つかまえたイルカ、殺されたイルカの行き先を見るにつけ、この漁が和歌山の片田舎である地元にとって大きなお金を生む産業であるんだな、ということもよくわかりました。

以上です。

わたしはイルカが大好きです。しかしそれは人間の立場からであって、それ以外の立場に立てません。この映画に賛成でも反対でもありません。ただ、もしこの映画を見るのなら、ラストシークエンスは覚悟して見ないといけないと思います。googleの画像検索でも出てきますが、動画で見るとさらに驚くべき屠殺シーンでした。見ていて心が痛くなる。でも心が痛むのも、殺すのも、批判するのも、人間の勝手。イルカ殺しに反対したところで、明日、肉を食い、魚を食い、野菜を引っこ抜き、自分の手は結局生きている限り殺しに汚れているのです。

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